インボイス制度って結局どんな制度なの?概要を徹底解説!

昨年からニュースやSNSでよく耳にするようになった「インボイス制度」という言葉。
ぱっと聞かれて皆さんは説明できますか?
実は、事業者(法人、個人事業主等)が納付する消費税に関わっており、今日の経営では避けては通れない言葉なのです!

本記事では、インボイス制度についての概要や背景、そしてその影響の要点を凝縮しております。
全くわからない、言葉だけ知っているけど内容までは…という方は必見な記事です。
ぜひ最後までご覧ください!

前段

消費税の仕入税額控除

インボイス制度の概要を知るには、「消費税の仕入税額控除」の仕組み理解が必須です。

事業者が消費者を納税する際、納税額は以下式に基づいて算出します
売上に係る消費税額 ー 仕入などに係る消費税額(=仕入税額)=消費税納付額


この仕入税額が「消費税の仕入税額控除」のことを指します。
上記念頭に置いていただけると、後々の概要説明にて話がつながると考えます。

消費税の仕入税額控除の仕組み
出典元:仕入税額控除とは?意味やインボイス制度での変更点をわかりやすく解説

おさらいとして上記図のB加工工場の納税額を算出してみましょう。

B加工工場は

売上:1,320円(内、消費税120円)
仕入:1,100円(内、消費税100円)

となりますね。

よって、B加工工場が納付すべき消費税は

120円 ー 100円 = 20円

となります。

ただし、すべての事業者が消費税を納税はしません。
消費税の納付するかしないかは以下名称で分かれるのですが、納税対象になるのは課税事業者のみです。

課税事業者・・・消費税の納税義務発生
免税事業者・・・消費税の納税免除

課税/免税事業者になる条件の違いについては、以下フローチャートを参照ください。

課税事業者と免税事業者の違いがわかるフローチャート
出典元:消費税の免税事業者とは?免税事業者と課税事業者の違い(自営百科)

インボイス制度とは?

「消費税の仕入税額控除」と「課税事業者」。
こちらが概要を理解するキーワードになります。
念頭の上、以下読み進めてください。

概要

インボイス制度とは、適格請求書等保存方式のことで2023年10月1日に施行された制度です。
適格請求書(以後インボイスと称する)というのは、適格請求書寺登録番号や適用税率、消費税額等を記載した請求書のことで下図のチェックシートにある要項を満たした請求書のことを指します。

これにより、事業者が消費税の仕入税額控除を行うには、商品・サービスの仕入先から以下事項が記載されたインボイスを保存していることが原則必須となりました。

インボイス記載事項チェックシート
参照元:インボイス記載事項チェックシート(国税庁)

尚、インボイスを発行できるのは
管轄税務署に課税事業者として適格請求書発行事業者の登録をした事業者のみです。
※免税事業者はインボイス発行不可

下図の場合だと
仕入先がインボイスを発行しているため仕入税額控除が適用され、税務署への納付額は2万円となります。

仕入先がインボイスを発行した場合
インボイス制度を図解でわかりやすく解説!制度対応においてのチェックポイントや注意点は?(Moneyforward請求書)

仕入先が免税事業者だった場合

では、仕入先が免税事業者の場合は、仕入税額控除はどうなるのでしょうか?

課税事業者がインボイスを発行できない免税事業者から仕入をした場合
インボイス制度導入後は原則仕入税額控除が受けられなくなります


下記のように、
消費者から消費税3万円を受けとり、仕入先に消費税1万円を支払ったとしても、課税事業者は仕入税額控除ができません。
したがって、課税事業者は仕入先分も含めた計3万円の納税が必要になります。

仕入先がインボイスを発行しない場合
出典元:インボイス制度を図解でわかりやすく解説!制度対応においてのチェックポイントや注意点は?(Moneyforward請求書)

補足:インボイス制度導入の背景・目的

インボイス制度が導入された背景に、2019年10月より消費税率が2種類(8%,10%)になったことが関係しています。
税率が混在する中、インボイスを用意することでどの商品・サービスに何%の税率がかかっているのかを明確にすることが可能になります。

これにより、
「消費税額等を正確に把握することができる」(※1)ことを目的にインボイス制度は導入されています。

インボイス制度が事業者に与える影響は?

事業者が課税事業者と免税事業者のどちらに該当するかで対応が異なります。

以下ではそれぞれの影響について述べていきます。

課税事業者

インボイスを発行する側、受け取る側でそれぞれ事前準備が必要になります。

インボイスを発行する側としての準備

インボイス発行事業者の登録申請書を税務署に提出し、適格請求書発行事業者として登録を受ける必要があります。
※申請時はe-taxでの電子申請、もしくは書面で管轄税務署への提出のいずれかになります。

申請後、審査を経て登録された場合は税務署にて公表と事業者への通知が行われます。
※通知方法は申請時の方法によってe-tax経由での電子通知、もしくは書面での通知のいずれかになります。

政府広報オンラインによると通知後、継続的な取引がある取引先には、必要に応じて以下を行った方がよいとのことです。

(1)インボイス発行事業者に登録したこと
(2)登録番号
(3)交付するインボイスの様式
(4)インボイスの交付方法

尚、大まかな流れを図にした画像を以下添付します。
各ステップについてより詳細を知りたい方は出典元のリンクよりご確認ください。

インボイス制度の登録申請3つのステップ
出典元:令和5年10月からインボイス制度が開始! 事業者間でやり取りされる「消費税」が記載された請求書等の制度です(政府広報オンライン)

インボイスを受け取る側としての準備

大きく以下2点の確認が必要になります。

  • インボイスの保存・管理
    仕入税額控除を適用するにはインボイスを保存することが必要になります。
    そのため、受けとった際は登録番号の有無で管理するなど管理方法を整理しておく必要があります。
  • 仕入先が免税事業者の場合の対応
    仕入先の事業者が免税事業者の場合、取引で発生した消費税の仕入税額控除は不可です。
    継続的に取引を行うのかの有無、受け取る請求書の様式や受領方法など必要に応じて確認し、社内で調整しておく必要があります。

免税事業者

免税事業者のままでいる場合、必要に応じて取引先との話し合いが必要になる可能性があります。

概要で説明したとおり、免税事業者である限りインボイスの発行はできません。
課税事業者側からすると、免税事業者が仕入先だと仕入税額控除が適用されず負担納付額が増加するデメリットが発生します。
そのため、状況によっては取引継続が厳しくなる可能性もあります。
免税事業者でいる場合は上記踏まえて検討しましょう。

また、選択のひとつとして免税事業者→課税事業者に転換するという手もあります。
免税事業者の条件であっても申請手続きを行えば、税務署の審査が通れば1)課税事業者になる、2)インボイス発行が可能になります。

一方で、課税事業者となることで消費税を申告・納付する義務が発生します。免税事業者から課税事業者となるのか、免税事業者のままとするのかについては、取引先との状況を踏まえて検討する必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
本記事を通して少しでもインボイス制度について概要をつかめたら幸いです。
制度に関する前提情報がわかると、制度への理解がぐっとあがるのではないでしょうか。
尚、インボイス制度は昨年導入してから日が浅いため各事業者への負担の急増を考慮し、国税庁では様々な優遇措置を期間限定で実施しています。
適宜情報が更新されていますので、お手すきに国税庁のサイトにて確認してみてくださいね。